2025年ワールドシリーズ・オブ・ポーカー(WSOP)メインイベントはラスベガスで幕を閉じ、歴史に残る最終ハンドが生まれた。Poker Players Championshipで4度優勝しているMichael Mizrachiが、ヘッズアップでアマチュアのJohn Wasnockを破り、夢のブレスレットと1,000万ドルを獲得。Wasnockも準優勝で600万ドルを手にし、大きな成功を収めた。
この決定的な一手は、トップレベルの勝負のわずかな差を示すと同時に、GTO(ゲーム理論最適解)の観点から見ても興味深い題材となった。
プリフロップ:スモールブラインドのレイズ vs ビッグブラインドのディフェンス
- Wasnock(SB):75,500,000(30.2bb)
- Mizrachi(BB):509,000,000(203.6bb)
- ブラインド:1,000,000/2,500,000(BBアンティ2,500,000)
WasnockはA♠9♦で500万にレイズ。一般的には自然な動きだが、30bb前後の深さでは、GTO理論はA9オフスートをリンプ戦略に混ぜることを推奨する。レイズは誤りではないが、最適解ではない。
Mizrachiは10♣3♣でディフェンス。全てのスートハンドはこの場面でコールが推奨されるため、理論的に正しい判断だった。
フロップ:A♦9♣7♣
両者とも大きくヒット。Wasnockはトップツーペア、Mizrachiはフラッシュドローを獲得。
Mizrachiはチェック。BB側はこのようなテクスチャではレンジ全体をチェックするのが一般的で、理論的にも妥当。
Wasnockもチェックを選択。これが最初のズレだった。トップツーペアはダイナミックなボードで強力なハンドであり、GTOは高頻度でのベットを推奨する。ベットでポットを構築し、ドローを抑えることができる。
ターン:4♣

ターンでクラブが落ち、Mizrachiはフラッシュを完成。ここでもチェックを選択したが、これはレンジバランスを維持する上で合理的だった。
Wasnockは12,500,000のポットに対して10,000,000をベット。アクション自体は正しかったが、サイズが大きすぎた。理論的にはポットの約40%が望ましく、それによりレンジを広く保ちつつ弱いハンドからもバリューを取れる。ほぼポットサイズのベットは極端で、フラッシュに脆弱となった。
Mizrachiは3,000万にレイズ。これは理論上推奨される動きで、中程度のフラッシュは早めに強調して打ち出し、最強のフラッシュはスロープレイできる。サイズはやや大きめだったが、まだ妥当な範囲。
Wasnockはオールイン、Mizrachiは即コール。この局面では、A9はオールインが最適であり、レイズしたフラッシュは必ずコールする。
リバー:5♣
リバーに再びクラブが落ち、Mizrachiの勝利が確定。彼は2025年WSOPメインイベント王者となり、賞金1,000万ドルを手にした。
総括:完璧に近いMizrachi、惜しかったWasnock
Mizrachiはプリフロップからリバーまで理論に沿った完璧に近いプレーを見せた。
一方、Wasnockは堅実だったが、2点で理論とズレた。
- フロップでのチェックにより、バリューを取りこぼした。
- ターンでの大きすぎるベットがレンジを不安定にし、フラッシュ相手に脆弱となった。
ただし、事後分析と実際に1,000万ドルが懸かった現場での判断は全く別物だ。Wasnockは直感と勇気でここまで勝ち上がり、最終的に600万ドルを獲得。惜しくも王座には届かなかったが、その戦いぶりは称賛に値する。