アジアのポーカー史が塗り替えられました。11月30日に幕を閉じたAPT Championship 2025は、単なる大規模なトーナメントという枠を超え、アジア開催として史上最大のポーカーフェスティバルという不動の地位を確立しました。
台北のRed Spaceを舞台に、CTP(Chinese Texas Hold’em Poker Club)とのパートナーシップで開催された17日間の熱戦。その最終的なスタッツは、これまでの常識を覆すものでした。期間中の総エントリー数は前人未到の28,265エントリーを記録。全イベントを通じた賞金総額は10億6,031万9,544台湾ドル(約3,420万米ドル)という天文学的な数字を叩き出しました。
特に20のチャンピオンシップイベントだけで1万人以上が参加し、約2,200万米ドルもの賞金が動いた今回のシリーズ。台北は今、世界中のポーカープレイヤーが目指すべき「アジアの決戦の地」となっています。
フリーズアウト形式の1万ドルメイン、インドのSharmaが優勝賞金3,700万台湾ドルを獲得
今大会のハイライトは、なんといってもバイイン31.1万台湾ドル(約1万米ドル)のメインイベントでしょう。運営チームは今回、リエントリーを一切認めない「フリーズアウト(Freezeout)」形式を採用するという勝負に出ました。
この真剣勝負の舞台には世界中から671名の猛者が集結し、1億9,400万台湾ドル(約620万米ドル)という巨大な賞金プールが形成されました。これはラスベガス以外で開催された1万ドルバイインのトーナメントとして過去10年で最大、そしてAPT史上でも最高額です。
過酷なロングストラクチャーを制し、栄光のゴールデンライオン・トロフィーを掲げたのはインドのNishant Sharma。優勝賞金3,700万台湾ドル(約120万米ドル)を手にした彼は、インド人プレイヤーとして史上3人目となる「シングルトーナメントでのミリオンダラー獲得」という快挙を成し遂げました。
このフリーズアウト形式には、ポーカー殿堂入りのレジェンドErik Seidelも賛辞を送っています。「リエントリー制も悪くないが、フリーズアウトには特別な重みがある。これが『アジアのメインイベント』としての格を決定づけた」と、その競技性の高さを評価しました。
ハイローラー記録が3度更新される異例の展開
アジアにおけるハイステークス需要の爆発的増加を象徴するように、本シリーズでは9つのイベントで賞金プールが100万米ドル(約1.5億円)を突破しました。特にメインイベント以外の最高賞金記録を巡っては、数日の間に記録が3度も塗り替えられるというデッドヒートが繰り広げられています。
口火を切ったのはRoman Hrabecでした。[Event 7]スーパーハイローラーを制して記録を樹立したものの、その天下はわずか24時間。[Event 10]スーパースター・チャレンジを制したCalvin Leeがあっさりとその記録を抜き去りました。
しかし、最終的にこの「レコードブレイク合戦」に終止符を打ったのはアイルランドのプロ、Toby Joyceです。彼が優勝した[Event 13]ハイローラー・チャンピオンシップは賞金プール7,570万台湾ドル(約240万米ドル)に達し、APTの19年の歴史において「メイン以外で最もリッチなトーナメント」として記録されました。
圧倒的なフィールド規模と多様性
ハイローラーだけでなく、一般イベントの盛り上がりも記録的でした。[Event 1]ナショナルカップには2,398エントリーが殺到。メインイベント以外のトーナメントとしてツアー史上最多の参加人数となりました。
また、[Event 3]ウルトラスタック・チャンピオンシップには49カ国から1,867名が参加し、シリーズ全体では55カ国ものプレイヤーが台北に集結。地元台湾勢も負けてはいません。Natural8アンバサダーのNevan Changが1,603エントリーのミニメインイベントを制し、キャリアベストのスコアとともに悲願のライオントロフィーを獲得しています。
サテライトの賞金プールが1,800万台湾ドル越え
今大会の熱量を象徴するもう一つの数字が、メインイベントへの予選(サテライト)です。Event #102 Step 2メガサテライトには399名が参加し、サテライトにも関わらず賞金プールは1,827万1,008台湾ドル(約58.5万米ドル)に到達しました。これはAPT史上、そしておそらくアジアのライブポーカー史上でも最大規模のサテライトでしょう。
また、オーストラリアのJulian Warhurstが[Event 16]フリーズアウト・チャンピオンシップで優勝し、APT史上初めて「チャンピオンシップタイトル」と「APTビッグスリー(主要3大タイトル)」の両冠を達成したプレイヤーとして歴史に名を刻みました。
APT 2026年スケジュール発表、開幕戦は済州島
2025年シーズンが歴史的な成功で幕を閉じると同時に、APTは創設20周年を迎える2026年のスケジュールを発表しました。来年もアジアの主要3都市で5つのビッグフェスティバルが開催されます。
2026年 主要スケジュール
- APT済州クラシック(APT Jeju Classic): 1月30日~2月8日(済州神話ワールド)
- APT台北(APT Taipei): 4月22日~5月3日(Red Space)
- APT仁川(APT Incheon): 8月7日~8月16日(パラダイスシティ)
- APT済州(APT Jeju): 9月25日~10月4日(済州神話ワールド)
- APTチャンピオンシップ(APT Championship): 11月13日~11月29日(台北 Red Space)
新シーズンの開幕戦となる「APT済州クラシック」は来年1月末にスタート。メインイベントはバイイン230万ウォン(約1,600米ドル)、保証賞金総額22億ウォン(約150万米ドル)が用意されています。アジアポーカーの熱狂は、2026年も留まることを知りません。







