米国ミズーリ州において、スポーツベッティング(スポーツ賭博)市場がついに開放された。2024年11月の住民投票で「修正第2条(Amendment 2)」が承認されたことを受け、同州では12月1日よりオンラインおよび実店舗での賭けが正式に解禁となった。これにより州内13のカジノ施設および最大14のモバイル事業者に市場が開かれ、初日から主要8社がサービスを開始。激戦区としての幕開けを迎えた。
即日サービスを開始し、ベッティングの受付を始めたモバイル事業者は以下の8社である:
- bet365 Sportsbook
- BetMGM Sportsbook
- Caesars Sportsbook
- Circa Sports
- DraftKings Sportsbook
- Fanatics Sportsbook
- FanDuel Sportsbook
- theScore Bet(旧ESPN BET)
今回のミズーリ州進出について、Circa SportsのCEOであるデレク・スティーブンス氏は強い意欲を見せている。同氏は、全米でも屈指のスポーツ熱狂地帯への進出はブランドにとって重要な意味を持つとし、次のように述べた。「ラスベガス流の哲学をミズーリ州に持ち込めることは、我々にとって大きな節目となります。州内の利用者の信頼を獲得し、成長著しいミズーリ州のスポーツベッティング市場において不可欠な存在になりたいと考えています」
サービス開始直前の波乱:Underdogが参入を断念
ミズーリ州におけるスポーツベッティング合法化への道のりは平坦ではなかったが、正式ローンチの直前にも予期せぬ事態が発生していた。当初、初期参入リストに名を連ねていたUnderdog Sportsが、サービス開始の前週になって突如申請を取り下げたのだ。これにより、同社は当初予定されていたリストの中で唯一、初日の参入を見送る形となった。
とはいえ、市場の構造は依然として強固だ。修正第2条に基づく法規制では、モバイル事業者は原則として州内のカジノ施設またはプロスポーツチームと提携(Tethered)する必要がある。しかし、例外として極めて価値の高い「単独運営ライセンス(Untethered)」が2枠設けられており、このプラチナチケットはDraftKingsとCirca Sportsが獲得した。
単独ライセンスを取得できなかった大手各社は、戦略的提携を通じて参入を果たしている。FanDuelはMLS(メジャーリーグサッカー)のセントルイス・シティSCとパートナーシップを締結。bet365も今年早い段階でMLBのセントルイス・カージナルスとの提携を発表し、市場へのアクセス権を確保していた。
大学選手の個人成績賭けは禁止、税収は教育支援へ
業界の規制・監督はミズーリ州ゲーミング委員会(Missouri Gaming Commission)が担う。新法では賭けを行える法的年齢を21歳以上と定めており、事業者は50万ドルのライセンス料に加え、収益の10%を税として納める義務がある。
ベッティングの対象については明確な線引きがなされた。大学スポーツへの賭け自体は認められているものの、ミズーリ州内の大学チームに関連する「プロップベット(選手個人の成績を対象とした賭け)」は厳格に禁止されており、学生スポーツの公平性を保護する措置が取られている。
この新たな産業から得られる税収は、教育資金の重要な柱となる見込みだ。税収の大部分はK-12(幼稚園から高校まで)および高等教育機関への支援に充てられる。また、税収の10%はミズーリ州精神保健局のギャンブル依存症対策基金に配分され、適正なギャンブル環境の整備に使われる。
カジノ収益の減少傾向を反転へ、近隣州との競争力強化
スポーツベッティングの解禁は、ミズーリ州にとって待望の施策であった。同州は8つの州と隣接しているが、そのうち7州では既にスポーツベッティングが合法化されており、資金の州外流出が長年の課題となっていた。
米国ゲーミング協会(American Gaming Association)のデータによると、2024年のミズーリ州の実店舗カジノ収益は18.8億ドルで、州に4.5億ドルの税収をもたらした。しかし、これは2023年比で収益が2.1%減少、来場者数も約4%減少という厳しい数字であり、スポーツベッティングの導入は、この減少トレンドを反転させ、州内に資金を留めるための切り札と見られている。
市場予測は極めて楽観的だ。BetMissouriの試算によると、サービス開始初週の取扱高(Handle)は6570万ドルに達し、12月単月では2.626億ドルまで伸びると見込まれている。さらに、今後わずか4ヶ月以内に州全体の取扱高が10億ドルを突破するとの予測も出ている。
長期的な視点では、業界大手のFanDuelとDraftKingsが、最初の5年間で両社合計5.75億ドルの収益を上げると試算しており、これが実現すればミズーリ州には約5750万ドルの新たな税収がもたらされることになる。







