2024年のポーカーシーンで、ダニエル・マオールの勢いが止まりません。わずか1年半前までは一人のグラインダーとして地道に戦っていたマオールですが、今や彼はポーカー界の主要タイトルを次々と手中に収めています。
記念すべき初開催となったPGT(PokerGO Tour)「True Classic Rags to Riches」において、マオールは161エントリーのフィールドを制し、優勝賞金11万ドル(約1,600万円)を獲得しました。彼にとってこれは、2024年のBetMGM Classic優勝、そしてWSOPゴールドブレスレット獲得に続く、今年3つ目のメジャータイトルとなります。
バイイン$3,300のノーリミットホールデムで行われた本大会。ファイナルテーブルは劇的な展開の連続でしたが、マオールは絶体絶命の窮地から這い上がり、最後はヘッズアップをわずか2ハンドで決着させる圧倒的な強さを見せつけました。
ファイナルテーブル序盤:ショートスタックを巡る攻防
Day2を勝ち抜きファイナルテーブルに進出した時点で、マオールのチップ量は4番手。上位のジャレッド・ジャッフィー、カルビン・アンダーソン、テリー・フライシャーとは200万点以上の差があり、決して楽なスタートではありませんでした。
序盤はショートスタック勢の生き残りをかけた激しい戦いとなりました。最初に脱落したのはイギリスのジャック・ハードキャッスル。彼はQ9で勝負に出ましたが、アンソニー・フーのKQに及ばず7位($15,000)で終了となりました。
そのフーは、マイケル・ワンのポケット6がフライシャーのポケット8に敗れ6位($20,000)で飛んだことで順位を一つ上げましたが、反撃もそこまででした。ブラインドヘッズでの勝負で、フーのK10はアンダーソンのA10にドミネートされ、5位($25,000)で姿を消しました。
運命の「10」:マオールの起死回生
残り4名となり、ここから試合が大きく動きます。マオールはこの局面でトーナメント最大の危機を迎えました。ビッグブラインドからA10で残り300万点をオールインしたマオールに対し、スモールブラインドのアンダーソンがAQでコールしたのです。
ドミネートされ、アウツはわずか3枚。敗退が濃厚と思われたその時、フロップに落ちた「10」が運命を変えました。この劇的な逆転でマオールは2位に浮上し、優勝戦線に踏みとどまります。
一方で勢いを失ったのが、チップリーダーとして4ハンド戦を迎えたジャレッド・ジャッフィーです。思うようにチップを増やせない中、最後はJ9で残り100万点をオールイン。アンダーソンのA6に対し、フロップでJをヒットさせリードするも、リバーで無情にもAが落ち逆転負け。「ビッグ・ツナ」ことジャッフィーは4位($35,000)で終了しました。
激動の3ハンド戦:ジェットコースターのような展開
マオール、アンダーソン、フライシャーによる3人の戦いは、チップが乱れ飛ぶ激戦となりました。まずアンダーソンが、マオールの3ベット・フォールド後にフライシャーのポケット5のオールインをポケットKで受け、これを制してチップリーダーに返り咲きます。
しかし、そのリードは一瞬で消え去りました。直後のハンドでアンダーソンがリバーでフルハウスを完成させますが、マオールはフロップの時点ですでに上位のフルハウスを完成させていたのです。この不運なクーラー(Cooler)により、主導権は再びマオールへ。さらにマオールは、ボードにフラッシュの目がなくストレートドローを外したアンダーソンのリバーブラフを、セカンドペアで正確にキャッチし、リードを拡大しました。
決着はプリフロップでの激突でした。ボタンからA10スーテッドで500万点強を4ベットオールインしたアンダーソンに対し、マオールはスモールブラインドでポケットKを持って待ち構えていました。アンダーソンはターンでフラッシュドローまで発展しましたが、リバーはブリック。アンダーソンは3位($50,000)となり、マオールが全体の70%以上のチップを持ってヘッズアップへ進出しました。
瞬殺のヘッズアップとPGTポイントレース
圧倒的なチップリードを持つマオールとフライシャーの戦いは、開始からわずか2ハンドで決着しました。2ハンド目、フライシャーがAKで650万点をオールインすると、マオールはボタンでポケット9を見つけスナップコール。ボードはQハイで抜け、マオールのポケットペアが勝利を確定させました。フライシャーは準優勝で$74,000を獲得しました。
この大会結果はPGTシーズンランキングにも影響を与えました。サム・ラスコウィッツは21位で6ポイントを獲得。わずかなポイントですが、これによりデニス・ワイスとの同点状態を抜け出し、単独48位へ浮上しました。上位ランカーの中には最終戦(チャンピオンシップ)の出場資格を満たしていないプレイヤーがいるため、実質的にラスコウィッツは出場圏内であるトップ40ラインに滑り込んだ形となります。また、マイケル・ワンは20ポイントを加算し、1,283ポイントでディラン・リンデを抜き17位に浮上しました。
PGT True Classic Rags to Riches 結果
| 順位 | プレイヤー | 国籍 | PGTポイント | 賞金 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Daniel Maor | アメリカ | 110 | $110,000 |
| 2 | Terry Fleischer | アメリカ | 74 | $74,000 |
| 3 | Calvin Anderson | アメリカ | 50 | $50,000 |
| 4 | Jared Jaffee | アメリカ | 35 | $35,000 |
| 5 | Anthony Hu | アメリカ | 25 | $25,000 |
| 6 | Michael Wang | アメリカ | 20 | $20,000 |
| 7 | Jack Hardcastle | イギリス | 15 | $15,000 |







