実験映像が話題に Deckmate 2の安全性に注目集まる
自動シャッフルマシンはハッキングできるのか? その疑問を検証したのが、米テクノロジー誌『WIRED』のシニアライター、アンディ・グリーンバーグ(Andy Greenberg)だ。彼は最新動画「I Cheated At Poker By Hacking A Casino Card Shuffling Machine」で、セキュリティ専門家ジョセフ・タタロ(Joseph Tartaro)とプロポーカープレイヤーのダグ・ポーク(Doug Polk)と共に、世界中のカジノで使用されているDeckmate 2の脆弱性を実験。公開からわずか24時間で10万回以上再生され、ポーカー界で大きな話題となった。
USBポートが盲点 カード順序をリアルタイムで取得
長年、自動シャッフル機のセキュリティを研究してきたタタロは、Deckmate 2の背面にあるUSBポートが重大な弱点であると指摘する。動画では、彼がBluetooth対応デバイスを接続し、シャッフル後のカード順序を読み取ってスマートフォンに送信する様子が映し出されている。
「このデバイスにはBluetoothモジュールがあり、スマートフォンと無線で接続されます。シャッフルが完了するたびに、内部カメラが撮影したカード順序を取得して、私の携帯に送ってくれるんです」とタタロは説明する。
プライベートゲームで実験 グリーンバーグが圧勝
ハッキングを終えたグリーンバーグは、タタロと2人の一般プレイヤーを招き、プライベートポーカーゲームを実施。タタロはチップの動かし方を合図にして、グリーンバーグへフォールド、コール、レイズの判断を伝えた。結果、プロではないグリーンバーグが完璧なプレイでシット&ゴー戦を勝ち切り、ハッキングの威力を証明する形となった。
ダグ・ポーク「カジノでは安全 私設ゲームが危険」
動画の反響を受け、ポークは冷静な見解を示した。彼によると、正式なカジノ環境で使用されているDeckmate 2は安全性が保たれているという。
「カジノに設置されているDeckmate 2なら心配する必要はありません。契約のもと、ライセンスを持つ技術者が定期的に整備しています」とポークは語る。「問題は、ブラックマーケットや中古市場で流通しているDeckmate 2です。メーカーの管理外で修理・改造され、そのままゲームで使われてしまうことがあるんです。」
さらに彼は「カジノ以外の場所で、こうした機器を使ってプレイヤーを騙す事例を何度も聞いた」と警鐘を鳴らした。
メーカー側の対応 全世界で無償アップデート
Deckmate 2を製造するライト・アンド・ワンダー(Light and Wonder)は『WIRED』の取材に対し、「すべての顧客に対し、Deckmateシャッフラーのファームウェアを無償で更新した」とコメント。すでに脆弱性への対策を完了したと強調した。
それでもタタロは「完全に安全とは言い切れない」と指摘し、とくに非合法なプライベートゲームでの悪用リスクを懸念している。
テクノロジーによる不正は進化中
実はこの問題、いまに始まったことではない。2024年には心理学者でありポーカープレイヤーのマリア・コニコヴァ(Maria Konnikova)が、ナノカメラや電子デバイス入りのカードプロテクター、サングラスなど、新たな不正ツールの危険性を指摘していた。
今回のグリーンバーグの実験は、ポーカーの世界に潜む新たな現実を突きつけた。テクノロジーが進化する今、もはや「シャッフル=公正」とは限らない時代が来ている。