なぜポーカーではCOが稼げるのか
テキサスホールデムにおいて、ポジションは勝率に直結する最も重要な要素です。「ボタン(BTN)」が最強のポジションであることは周知の事実ですが、その右隣に位置するカットオフ(CO)もまた、極めて高い利益を生み出す可能性を秘めています。
勝ち組プレイヤーのデータを見ると、COの収支はBTNに次いで2番目に高くなる傾向があります。しかし、多くのプレイヤーはCOのポテンシャルを十分に活かしきれていません。本記事では、COからの最適なオープニングレンジ、左隣のプレイヤーへの対応、そしてブラインドに対する攻撃方法など、COの勝率を最大化するための戦略を徹底解説します。
なぜカットオフ(CO)は稼げるのか?
COは「レイトポジション」に分類され、以下の2つの大きなアドバンテージを持っています。
1. 情報の優位性
あなたの手番が回ってきた時点で、すでにアーリーポジション(EP)やミドルポジション(MP)のプレイヤーのアクションを確認できています。参加者が絞られた状態で意思決定ができるため、リスク管理が容易になります。
2. 実質的なボタンとしての役割
もしあなたの左隣にいるBTNがフォールドすれば、そのハンドの残りのストリート(フロップ、ターン、リバー)において、あなたは絶対的なポジション優位(最後にアクションできる権利)を得ることになります。これにより、相手のチェックに対してブラフを仕掛けたり、ポットサイズをコントロールしたりすることが容易になります。
COからの適正なオープンレンジ(RFI)
COからは、UTGやMPに比べてかなり広いハンドレンジで参加(オープンレイズ)することが推奨されます。一般的なシチュエーションにおいて、COからの適正なオープン頻度(RFI: Raise First In)は26%〜30%程度です。
この範囲を上下することで、テーブル状況に応じた微調整が可能になります。タイトなテーブルでは上限に近づけ、アグレッシブなテーブルでは下限に抑えるなど、柔軟な対応が勝率向上の鍵となります。
推奨されるハンド構成
テーブルの状況によって微調整は必要ですが、以下のハンドは基本的にオープンの対象となります:
- ポケットペア:22+(すべてのペア)。
- スーテッドエース:A2s〜AKs(すべてのスーテッドA)。
- オフスーツブロードウェイ:AKo, AQo, AJo, KQo(標準)。後ろのプレイヤーがタイトならKJo, QJoもMixまたはオープン。
- スーテッドコネクター:54s〜T9s。
- スーテッドギャッパー:J9s, T8s, QTsなど、プレイアビリティの高いハンド。
- オフスーツエース:A9o+が基準。ブラインドが降りすぎる傾向があるならA8oやA7oもスチールレンジに加えます。
最重要課題:ボタン(BTN)への対応
COの戦略を決定づける最大の要因は、左隣(BTN)に座っているプレイヤーのタイプです。
1. BTNがタイトまたはパッシブな場合
これは理想的な状況です。BTNが頻繁にフォールドしてくれる(Nitな)プレイヤーであれば、あなたは実質的にBTNとして振る舞うことができます。K8sやQ9oといったマージナルなハンドまでレンジを広げ、積極的にスチールを狙いましょう。
2. BTNがアグレッシブな場合
BTNが高頻度で3ベット(リレイズ)を返してきたり、ポストフロップで激しく戦ってくる手強いレギュラープレイヤーの場合、戦略を「引き締める(Tighten up)」必要があります。ポジションがない(OOP)状態で上手いプレイヤーと戦うのは避けるべきです。A2s-A5sやKToのような下限のハンドをレンジから削り、ポストフロップで戦いやすい強ハンドに絞って参加しましょう。
ブラインドスチールとフォールドエクイティ
COからのオープンの多くは、スモールブラインド(SB)とビッグブラインド(BB)のチップを奪う「スチール」としての側面を持ちます。
降りすぎる相手を狙う
HUDなどのスタッツで、BBの「Fold to Steal」を確認してください。もしこの数値が75%を超える(高レイクオンラインでは80%+理想)なら、ハンドに関わらず「エニハン(Any Two Cards)」に近いレンジでレイズしても利益的になります。
コールが多い相手への対応
ブラインドが頻繁にコールしてくるものの、フロップでヒットしなければすぐに降りる(Fit or Fold)タイプなら、広めにオープンしてCベット(コンティニュエーションベット)でポットを獲得する戦略が有効です。
3ベットを打たれた時のディフェンス戦略
COから頻繁にオープンしていると、当然3ベットを受ける回数も増えます。これに対する防衛策は、ポジションの有無で明確に分かれます。
1. BTNからの3ベット(あなたはOOP)
最も厄介な状況です。ポストフロップで常に先にアクションしなければならないため、プレイの難易度が跳ね上がります。
- 対策:タイトに守る。AToやKJo、弱いスーテッドコネクターなど、ドミネートされやすいハンドは潔くフォールドします。
- レンジ:QQ+やAKで4ベット(バリュー)を返し、たまにA5sのようなブロッカーのあるハンドで4ベットブラフを混ぜます。コールレンジはかなり絞る必要があります。
2. ブラインドからの3ベット(あなたはIP)
ここでは広くディフェンスできます。ポストフロップで常に後からアクションできる(インポジション)ため、主導権を握りやすいからです。
- 対策:ポケットペアやスーテッドコネクター(76s, 87sなど)でコールする頻度を増やせます。
- メリット:相手のチェックに対してフロップで浮く(Float)、あるいは相手が諦めたタイミングでポットを奪うなど、スキルの差を出しやすくなります。
アイソレーション(リンパーへの攻撃)
ライブポーカーや低レートのオンラインゲームでは、前のプレイヤーがリンプ(BBと同額でコール)で入ってくることがよくあります。COはこれらをアイソレート(隔離)する絶好のポジションです。
絶対に一緒にリンプ(オーバーリンプ)してはいけません。通常より大きめのサイズ(3bb + リンパー1人につき1bb)でレイズし、BTNやブラインドを降ろして、弱いリンパーと1対1(ヘッズアップ)の状況を作り出しましょう。ポジションがあり、相手のレンジが弱いこの状況は、ポーカーで最も稼ぎやすいシチュエーションの一つです。
まとめ:COを極めるための4つの柱
COからの収支を最大化するための要点は以下の通りです:
- アグレッシブに攻める:27%〜30%の広いレンジでオープンし、主導権を握る。
- BTNを観察する:左隣がタイトならレンジを広げ、アグレッシブならレンジを絞る。
- スチールを恐れない:降りすぎるブラインド(BB FTS 75%+)からは容赦なくチップを回収する。
- ポジションを意識する:ブラインドからの3ベットには広く守り、BTNからの3ベットには慎重に対応する。
COは単なる「ボタンの予備席」ではありません。適切な戦略を実行すれば、あなたのバンクロールを増やす強力な武器となるはずです。ここで紹介した戦術を日々のプレイに組み込み、確実にエッジを積み重ねていきましょう。







