ここ数年、アラン・キーティングはハイステークスのライブ配信で最も注目を集める存在の一人となっている。ミシガン出身の彼は、派手なプレーと超高額ポットで知られ、多くの人から典型的な「クジラ」――資金力はあるが戦略性に欠けるプレイヤー――と見られてきた。しかし、実際にはその裏に緻密なロジックが隠されているという指摘もある。
苦いデビューから人気プレイヤーへ
キーティングが初めてHustler Casino Liveに登場したのは2022年4月。200/400ドルのキャッシュゲームでほぼ14万ドルを失う苦いデビューとなったが、そのアグレッシブなスタイルはすぐに視聴者の注目を集めた。それ以前にも2019年から2021年にかけて「Poker After Dark」に十数回出演していたが、ここまで話題になることはなかった。
その後、ライブ配信での成績は浮き沈みがあるものの、トータルではプラスを維持している。公開データによれば、配信された207.5時間のプレーで358,425ドルの利益を上げており、さらに最近の「Cash of the Titans」(PokerGO放送)では335,000ドルを獲得。通算で約69万ドルのプラスとなっている。彼が普段プレーする規模を考えると大きな数字とは言い難いが、「負け続けている」というイメージを覆すには十分だ。
コーチが見た意外な一面
ポーカーコーチであり解説者のマーク・グーンは、キーティングのプレーを100時間以上検証。その結果、単なる無謀なギャンブラーではないと結論づけた。
「多くの人はアラン・キーティングをクジラだと思っている。それこそが彼の狙いなんです」とグーンは語る。「一見無茶に見えるプレーの裏には、冷静で論理的な戦略がある。」
グーンは分析の中でいくつかの印象的なハンドを取り上げた。
ナインハイのブラフ
ボードはQ♣6♥6♣K♠7♦。キーティングは9♣2♦でプリフロップ3ベットし、その後も継続的にベット。ポットが154,000ドルに膨らんだところで、彼は32,000ドルという小さな額を打ち込んだ。結果的にはJ.R.のレイズでフォールドを余儀なくされたが、グーンはこのサイズ選択を「10点満点」と高く評価した。
ツーペアでの超ポットベット
マシュー「Hanks」ホーニグとの対戦では、ボード8♠4♦2♥9♥、ポット9,800ドルの場面で8♥2♣を持つキーティングがポットの2倍近いベットを実行。グーンは「強いペアは降りられないし、弱いハンドはどうせどんなサイズでも降りる」と説明し、理にかなった選択だと評価した。
百万ドル級のヒーローコール
最も印象的だったのはライバルのピーターとの一戦。ボードはA♣K♠7♠6♥4♥。9♦7♦しか持っていなかったキーティングに対し、ピーターは235,000ドルのリバーベットを打った。44万ドルを超えるポットに対してほとんどのプレイヤーならフォールドする場面だが、キーティングはコールを選択。相手の6♠3♠を見破り、最終的に911,000ドルの巨大ポットを手にした。
評価は割れるが存在感は絶大
キーティングは極めて高いVPIP(自発的参加率)で知られ、ほとんどのハンドに絡むため、ときには際どいカードで莫大なポットを失うこともある。そのため「無謀」という評価がつきまとうが、グーンの分析は彼のスタイルに一定の理論的裏付けがあることを示している。
果たしてアラン・キーティングは、戦略に基づいたハイレベルなプレイヤーなのか、それとも豪快に楽しむ富豪なのか。議論は続いている。ただひとつ確かなのは、彼の存在がテーブルに常にドラマをもたらし、現代のライブポーカーで最も魅力的な人物の一人であることだ。